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食べ物が危ない! 健康が危うい!(1)

2004-01-27

photo 食べ物が危ない! 健康が危うい!(1)

「食の乱れ」から、学校で「食育」が行われようとしています。
いったい何を、どう教えようというのか…、あれこれ考えてみました。

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朝日新聞のオピニオンのページに、「家庭の食の変化」に関する記事が大きく掲載されました。
なに気なく執筆者の名前を見ると、(ん?)かつての知り合い、岩村暢子さんです。
確か以前は「匂い」の研究をしていたはずですが、どうやらここ数年「食の変化」の調査に没頭していたようです。

そこでさっそく、原稿に目を通してみました。
するとそこには、とても興味深い数々の指摘がノ。
つまり、「子どもを取り巻く家庭の食の実態が激変」し、
「食の乱れ」が急激に進んでいるというのです。

これは、ぼく自身もそれとなく感じていたことでしたが、岩村さんは5年前からチームを組み、本格的に調査して、その結果を一冊の本にまとめていたようでした。
となれば、やっぱりその本を読んでみたくもなってきます。そこで急いで連絡してみたところ、さっそく『変わる家族、変わる食卓』という本を贈ってくれました。

●漫談以上に面白い ?!

いざ読み始めると、これがとにかく面白い。仕事もそっちのけで、一気に読み進めてしまいました。
何が面白いかというならば、それは地味な「食卓調査」でありながら、いまの社会の実相や、若い世代の生き方・考え方を、そこにまるごと赤裸々にあぶり出してくれていたからです。
ある意味でこの本は、下手な小説や評論以上に「現代社会」を鮮やかに映し出してくれています。
また下手な漫才や漫談以上に、思わず笑いにも誘ってくれます。もちろんそれは、どちらかといえば「ふくみ笑い」、あるいは「苦笑」なのですがノ。

最初のうちは、その面白さにただ頬をゆるめっぱなしだったぼくも、途中から「これは、笑っている場合じゃないぞ!」と思うようになりました。
なぜなら「食医学」や「糖鎖の科学」の立場から考えてみるとき、いまの日本の食生活の実態は、由々しき事態にほかならないからです。
だからこそ、政府も「食育」を叫び始めたのでしょうし、それを受けるかたちで、中央教育審議会も去年9月に「栄養教諭」を創設すべしと提言しています。
それもたぶん、「食の乱れ」があまりにも急激に進行してしまったからでしょう。

●「食観 」に鮮明な断層

というわけで、いまわが国では「食育」が、教育の中に取り込まれようとしています。ところで「食育」とはいったい何を意味し、いったい何を教えようとしているのでしょうか。
「食育」に関する情報をチェックしてみようと思い、インターネットで検索してみました。
すると「食育」のキーワードでは、なんと62万3千件もの情報があふれ返っています。その中のいくつかを覗いてみたところ、こんなものも出てきました。

 明治時代の日本教育の中身には、「五育」があると言われていました。
 それは、「食育」「知育」「体育」「才育」「徳育」の五つ。
 その一つである「食育」をいま一度考え直し、推進しようというものです。
 明治時代から「食育」が叫ばれていたとは驚きでした。
 しかしそれはいまの「食育」とは、かなり意味が違っていたのではないでしょうか。
 ぼくの勝手な憶測ですが、
 「五育」のすべてが「徳育」につながっていたような気もします。

それはさておき、問題は「栄養教諭」が「教育」する「その内容」です。
というのも、岩村さんもご指摘のように、「教育」がものの考え方や価値観に、非常に大きな影響を与えてしまうからです。

岩村さんは本の中で、次のように書いています。

 あるとき、調査データが1200食卓を超えたあたりで、
 ふと気づいたことがあった。
 ノノある年齢を境に、主婦が作るメニューや作り方、
 食事作りに対する意識や感覚などに、
 見逃せない明確な違いがあることに気づいたのである。
 年齢順にデータを並べて見ると、個人差を超えて見えてくるものが、
 確かにあると気づいた。
 例えば、2002年時点での年齢で言えば、
 43歳前後のところと、34歳前後あたりに「断層」が見られる。
 それぞれの断層を境に、
 それより若い主婦とそれより上の主婦では違いが見られ、
 しかも「断層」の位置は調査年とともに
 毎年一歳ずつ上がってきていることも分かった。

さて、その「断層」とは何でしょう。
これについて岩村さんは、世代を大きく3つに分類し、その特徴をそれぞれ紹介しています。

まず、43歳前後よりも上の年齢層。
これについては調査対象外だったようですので詳しくは述べられていませんが、まぁ、料理や調理に対する基本的な知識や技術を持ち、栄養バランスやおいしさ、味などもそれなりに考えて料理を作る、従来の一般的主婦と考えて差し支えないでしょう。

次に「43歳前後から34歳前後の主婦」ですが、
この層は「栄養・機能志向」が強く、極端に言えば、食事は栄養を摂取すること、料理はそれを組み合わせる作業といった考え方に立ち、「配合飼料型」であると指摘しています。
そして、加工食品を活用し、調理に余計な手間ひまをかけないことを肯定する感覚も濃厚だとか。そこで、奇妙な取り合わせの料理を作ったりすることも多いようです。

また「34歳前後から下の主婦」は、まず、「食材や調理に関する基本的な技術や体験がどうみても少ない」だけでなく、食への知識や関心も総じて低く、栄養に関してもそれほど重視していない。「配合飼料型」というよりは、「単品羅列型料理」が多くなっているようです。

要するに、食事内容の充実よりも、楽しく、好きなものが食べられることを指向し、大変なときや面倒なときは無理しないで「「買ってくればいい」「外食すればいい」と考える傾向が強いとか。
そしてこの層が、いまやお母さんとなり、子供たちを育てているわけです。

●食って、何? … 食の科学

「この断層にはきっと何か理由がある!」と、さらに徹底追及してみたところ、実は「彼女たちが中学校で受けてきた家庭科教育と密接な関係がある」ことを、岩村さんたちは「発見」したのでした。
 岩村さんは、こんなふうに推論しています。

 『43歳前後から下の主婦が使った教科書は、
 それまでの「調理」を「食物」と改め、
 技術重視から消費生活者教育寄りに変更。
 調理実習よりも食品を主要栄養素で分類したり…、
 一方、34歳前後から下の主婦が使用した教科書は
 ……実習メニューでは、男子も楽しく作れる菓子やデザート類が増え、
 家庭の食事を管理したり賄う者のための教育から、
 「個」として自分自身の食管理を中心に考えさせよう
 とする方向になっている。
 こうしてみると、今日「いま時の主婦は」と非難される事象も、
 実は多くが時々の学校教育で教えられた通りではないのかと気づくのである。
 そして「学校で習ったことなんか」と人々が思っている以上に、
 全国一斉の「教科書」や「学校教育」は、その後の社会や家庭、
 人の暮らしや生き方に、大きな影響を与えているのではないかと思う。』

 となると、やはり「食育」の内容こそが重要で、それが次代の人々に、再び大きく影響することにもなってきます。その意味で、「食育」や「栄養教諭」を教育に取り込む以前に、「食の科学」を徹底吟味することこそ重要とはいえないでしょうか。
 というのも、今号の「アメリカ事情」(13P)でも紹介したとおり、いかにお金をかけて食材を吟味入手したとしても、いまの社会の食環境のままでは、健康を保証することなど全くできないからです。だからこそアメリカでは「敗北宣言」が発表されたのでした。

 なぜこんなにひどい食環境になってしまったのでしょうか。農業の近代化や経済のグローバル化、サービス過剰化等々、そこには「文明社会の構造」がしっかりと根づいています。要するに、大量生産・大量流通・大量消費・大量廃棄という「20世紀システム」が構造的に稼動して、効率主義が社会を徹底支配しているからです。
 ゆえに、もし本当に真剣に「食育」に取り組むとしたら、この「20世紀システム」を「21世紀システム」へとシフトチェンジしていく以外にありません。

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