「その後」の化学物質過敏症問題
ようやく対策が始動
前号で「シックジャパンの風景」を掲載したところ、予想を越えた反響が返ってきた。また三月初旬には、西区に住む白アリ防除剤被害者のAさん親子からも、三日連続でSOSの電話が鳴った。これに対して「エコろじー紙」が札幌市に掛け合い、何とか緊急対策が立てられないものかと打診してみたところ、さっそく保健所による検査が実行に移された。札幌市としても、もはや放置できないということであろう。一方、白アリ防除剤の被害が全国各地でクローズアップされてきたこともあってか、薬剤メーカーなど約六〇社で作る日本しろあり対策協会(東京)もまた、「クロルピリホスの製造と使用」の自粛宣言に追い込まれている。この他、民主党でもこの問題の深刻さを理解し、夏の参議院選をにらんで「シックハウス対策法案」を今国会に提出するという。このように、ここ最近急激に社会問題化されつつあるシックハウス症候群…、遅きに失したとはいえ、社会は確実にこの問題の重要さを認識しつつあるようだ。
札幌市の素早い対応
それにしても、今回の札幌市の対応は素早かった。「西区に白アリ防除剤の害で苦しんでいる人がいる。人道的な立場から何とかならないものか」と本紙が相談してみたところ、さっそく関係部署が動いてくれたのだ。
まず市の保健所。それまでの申し入れでは「検査するまでに二カ月かかる」との回答だったが、なんと翌々日にはAさん宅に検査に入った。それくらいシックハウス問題に対する関心が高まってきている。検査結果はまだ出てはいないものの、この事実は、シックハウス問題が、ようやく市民権を獲得しつつあることを如実に物語っているとはいえまいか。
メーカー団体が自粛宣言
また、日本しろあり対策協会も、さすがに白アリ防除剤による健康被害を無視できなくなってか、いよいよ重い腰を上げざるをえなくなった。すなわち同協会では「今年四月からクロルピリホスの製造と使用を段階的に中止する」と発表するに至ったのだ。
クロルピリホスは最も代表的な白アリ防除剤で、一時は七割前後のシェアを占めていたという。Aさん宅の健康被害も、もちろんこのクロルピリホスによるものであった。
「段階的な中止」を宣言した日本しろあり対策協会は、その一方で「乳幼児や妊婦が出入りする家屋や公共施設での使用については直ちに自粛する」と宣言した。ということは、クロルピリホスの危険性がそれだけ深刻に認識されているということであり、本来なら、既存の建物に対する対策も同時に講じられなければなるまい。
が、同協会の今回の自粛は、あくまでも今後建築される建物に限定したものであって、既存の建築物はそのままということになる。
また今回の自粛は、農薬とほぼ同じ成分を持つクロルピリホスに限ってのものだが、その他にもひどい健康被害を引き起こす数多くの防除剤が指摘されているだけに、製造と使用の自粛は、さらに他の薬剤にも拡大されなければならないのではなかろうか。
シックハウス対策法案も
シックハウス、シックスクール、シックビルディング等々、私たちの生活環境はすっかり毒されるに至った。
『エコろじー』で度々指摘してきたように、小中学生が「キレる」背景にもこの問題が大きく横たわっているようだ。吸い込んだ有害物質はまず肺から直接血液、脳へと送られ、体に現れるよりも早く、神経障害、精神障害、行動障害を引き起こすという報告が海外から届いているからだ。
そんなこともあってか、民主党では今夏の参議院選をにらみ、いくつかの生活密着型法案を今国会に提出するというが、その中の柱の一つとして「シックハウス対策法案」も用意されている。これは新築時に化学物質の測定を義務づけるものだが、さらに進めて「既存住宅の浄化対策」も盛り込むべきだろう。
次々と届く被害者の声
というのも、Aさんに続いてBさん(山の手在住)からも、悲痛な叫びが編集室に届いたからである。Bさんの場合はマンションに住んでおり、入居当初から化学物質過敏症に苦しめられてきたが、その後貯水槽に投入された防錆剤によって症状がいっそうひどくなった。しかもそれまでは平気だった家族や犬までもがおかしくなった。
しかしBさんもまた、近所からは「変人、キチガイ扱い」され、誰にも苦しみが打ち明けられずに悩んできたという。この他にも、化学物質の被害を訴える電話が何度となく鳴った。このように苦しんでいる市民が現に存在する事実を考えるとき、新築だけではなく、既存の住宅や建築物も対策対象に取り上げて当然ではなかろうか。
誰にも潜む危険性
Bさんの事例については後日改めて報告したいが、化学物質過敏症患者の方々とお話していて感じることは、これは「誰もがある日突然被害者になりうる」ということだ。それまでは健康であっても、あるレベル以上の有害物質を体内に取り込んだとたん、とんでもない症状が突然起きるのだ。
毒づけ環境=シックジャパンの住民は、誰にも等しくその危険性が潜んでいる。だからこそ市民の声を行政にまで届け、みんなで健康的な生活環境を取り戻していく必要があるのではないか。実際、アトピーや喘息、皮膚病など多くの病気の原因に、有害化学物質の影響が考えられる。が、残念ながらそのことを理解する医師はまだ少ない。とにかくこの問題は、今世紀の重大課題といえそうだ。
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