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「シックジャパンの風景」

誰もが安全を願っているはず。被害を拡大させてはならない

 取材を通して、「白アリ防除剤の恐怖」が改めて見えてきた。というのも、記者自身がその被害を直接体験したからだ。高々2時間半の取材で唇と舌がしびれ、持ち帰った資料に浸透していた毒ガスの影響で、周囲の者たちまで気分が悪くなった。「気のせい」と言われてしまえばそれまでだが、しかし事実は事実。それにしても、あれほど酷い「毒ガス住宅」に住み続けていなければならないAさんたちが、心から気の毒に思えた。
 「恐怖」のもう一つの側面は、これだけ大変な問題が現にそこに横たわっているというのに、事の重大さを多くの人たちがほとんど認識していないということだった。
 その証拠に、この問題が新聞やテレビで報じられた事実はない。あるテレビ局から取材には来たものの、放映はしなかった。ただ一回、ある環境問題の雑誌がAさんの原稿を掲載しただけである。
 本来なら、まず町内会がこの問題の解決に取り組むべきだろう。地域の安全は、住民みんなの願いだからだ。しかしそうした動きは全く起こらず、むしろAさん親子が村八分めいたものに遭ったらしい。たぶん「事を荒立てるな」ということだろう。そこには住民たちのさまざまな利害関係がもつれ合っている。事が表に現れてしまっては、環境評価(地価の下落)を恐れる思いもあったにちがいない。

人命よりもお金が大事?

 「命は地球よりも重い」とは、かつてある首相が語った名言?だが、しかし現実の世の中はいまなお「お金第一・経済最優先主義」で貫かれている。確かに経済もお金も大切にちがいない。だがその結果、住民の健康がむしばまれ、幼い子供たちの将来が毒されても本当にいいというのだろうか。
 それにしても日本の社会は、あまりにも環境意識・危機意識に欠けている。このたび北広島の中学校でも体育館の蛍光灯が落ちてPCB被害が起こったが、もしもPCBの毒性を先生たちが理解していたとしたらこんな事態には至らなかったことだろう。
 最近NHKテレビの「クローズアップ現代」で工場跡の土壌汚染が報じられ、汚染された土壌は浄化しない限り売ることができなくなり、企業の経営を直撃していると言う。しかし住宅地ではいまなおひどい汚染が封印されたままに、平気で売られているのである。
 とは言っても、確かに事を荒立てるだけではいけないだろう。大事なことは汚染された土壌の浄化だ。それには町内会だけでは力不足、やはり札幌市の強力な行政的手腕が問われることだろう。
 ところが行政は全く行動を起こそうとせず、それどころかAさんの必死の訴えを無視し続けている。もっとも行政が動くにはそれなりの法的根拠と被害の科学的裏付けが不可欠にちがいないが、少なくても調査くらいは開始すべきではないだろうか。行政が果たすべき最も大切な役割の一つに、「住民の安全」が挙げられるはずだからである。

「安全」はみんなの願い

 この問題の深刻さを周囲の知人に語ったとき、「身の安全に気をつけたほうがいいよ」と多くの方々からの親切な忠告を受けた。なるほど、白アリ防除剤や化学物質の害を大声で叫んでは、快く思わない方々がいたとしても不思議ではない。そこには複雑な利害関係が渦巻いているからである。
 しかし繰り返すようだが、この問題は決して一部の人や一部の地域だけの問題ではない。だから問題を封印してしまっては、被害が拡大するばかりだ。どんな人でも、自分の子供や孫の未来の安全を願わない人はいないはず。人間としてのその本心に呼びかけながら、本紙では「事実を事実として伝えたい」と思っている。
 幸いなことに「エコろじー」は新聞としてだけではなく、インターネットを通じても広く全国にメッセージを伝えている。しかも嬉しいことに、早くも支援の声があちこちから届いている。ある者はメールで「白アリ防除剤被害の他の事例」を教えてくれ、ある者はホテルや病院、クリーニングなどの汚染事情を告発してくれた。
 また東京で友人に会ったとき、ビル内の恐るべき「空調病」のことも聞かされた。快適なはずの都市のオフィス空間が、いまや構造的な病気製造装置と化しているというのだ。
 これらの話は、決して「告発のための告発」ではない。あくまでも私たちの健全な環境の回復を願ってのことである。それだけに本紙では勇気をふるって、今後ともこの問題を追取材していきたいと考えている。

→みな 黙りこくっている



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